劣等感とは
劣等感とは、
「自分が劣っている」
という感覚のこと。
日常会話でも使う言葉ですよね。
アドラー心理学では、
劣等感をスタートラインとして
人間を理解しようとします。
なぜ劣等感を感じるのか?
「劣等感」とは
「不快な感覚」ではありますが
「不必要な感覚」ではありません。
人間は劣等感を感じることで
自らの「弱さ」を自覚し
それを「何とかしよう」と
することが出来ます。
もし劣等感がなければ
人間は弱さを克服できずに
絶滅していたことでしょう。
劣等感とは
人間が進化の過程で身につけた
生きるための力なのです。
劣等感を克服する方法
劣等感を克服する方法は
大きく分けて3つの方法があります。
- 自分を成長させる
- 他者と協力する
- 克服したつもりになる
1.自分を成長させる
「弱点を克服しよう」
と努力をすることで
その部分が成長して
結果として
弱点ではなくなる
というパターン。
例えば、
絵がへたな人が
一生懸命に練習することで
逆に絵が上手くなる
という感じです。
上手くいけば
劣等感を克服するだけでなく
「弱点」を「強み」
に変えることができる
そのような可能性のある
劣等感の克服方法です。
人間は
劣等感によって成長・発展できる
生き物なのです。
2.他者と協力する
自分の弱い部分を
他の人に助けてもらう
というパターン。
例えば、
片付けが苦手な人が
得意な人に手伝ってもらう
という感じです。
人間は
誰しも「弱さ」を持っています。
一人では乗り越えられないことも
他人と協力し合うことで、
乗り越えることができる
それが人間という種の
「強み」
なのです。
アドラー心理学では、
人間が社会を形成するのは
弱さを補い合うためである
と考えます。
劣等感を感じ
社会を作ることは
「人間の生存戦略」
なのです。
3.克服したつもりになる
弱さに直面することを避けて
優越感に浸るパターン。
例えば、
・病気を心配させて優越感を感じる
・自分の世界に引きこもる
などです。
このように
社会の役に立たない方法で
劣等感をごまかすことを
アドラー心理学では
「劣等コンプレックス」
と呼びます。
劣等感と劣等コンプレックス
「劣等感」は誰にでもあるものです。
劣等感は有害なものではありません。
人間は劣等感を感じることで
より良い自分に成長できたり
社会で助け合うことができます。
劣等感は
人間にとって有益な感覚なのです。
一方で、
「劣等コンプレックス」は
自分自身にとっても
社会にとっても
役に立つことのない
劣等感の現れ方です。
劣等感(Inferiority feelings)
その人が主観的に「自分は劣っている」と感じること。劣等コンプレックス(Inferiority complex)
劣等感を使って、ライフタスクから逃れようとすること。
例:自分は頭が悪いので勉強をしても無駄だ。(引用:Wikipedia:アドラー心理学)
アドラー心理学では
問題行動や犯罪行為は
劣等コンプレックスによるもの
としています。
コモンセンス
誰しもが持つ「弱さ」が
有益な劣等感となるか
無益な劣等コンプレックスとなるか
それを分けるポイントが
「コモンセンス」
です。
「コモンセンス」とは
この社会で共有されている
普遍的な価値観や考え方
のこと。
具体例には、
一人一人の人間が
「良いこと」と「悪いこと」
を区別するときに使う
一般的な感覚のようなものです。
*
コモンセンスが身についていれば
劣等感は成長や協力を伴った
有益な形で克服されます。
一方で、
コモンセンスが身についていなければ
劣等感は無益な方向に走り
劣等コンプレックスとなって
犯罪行為や問題行動として
現れてしまいます。
コモンセンスは
とても重要な感覚なのです。
コモンセンスを身につける方法
それでは、
コモンセンスはどのようにすることで
身につけることができるのでしょうか?
コモンセンスを身につける方法として
アドラーは
「あらゆるタイプの人と交流をすること」
を勧めています。
あらゆる人と分け隔てなく関わることで
個人のコモンセンスは社会に合わせて
柔軟に発達していくのです。
*
劣等感は、
社会の中で感じる感覚です。
劣等感を感じると
つい社会から身を引いて
安全な世界に閉じこもりたくなります。
けれども、
その劣等感を適切に克服するためには
それでも社会に参加をして
あらゆる人との交流を通して
社会のコモンセンスを身につける
必要があるのです。
勇気づけ
劣等感を克服するためには
コモンセンスが必要…
コモンセンスを身につけるためには
社会の中での交流が必要…
けれども
劣等感があると
上手く交流できない…
このように
劣等コンプレックスにハマると
「問題」と「対処法」が重なって
堂々巡りになってしまうことがあります。
*
この状況を解決する方法を
アドラー心理学では
「勇気づけ」
と言います。
「勇気づけ」とは
「自分はこの問題を解決できる」
という自信を持たせること。
具体例には、
「ありがとう」
「うれしい」
「たすかる」
の3つの言葉が、
他人を勇気づける
基本の言葉といわれています。
(参考:定年後の人生を変えるアドラー心理学)
逆に相手を批判をすることは
「自分には解決する力がない」
と思わせることになりますから
アドラー心理学ではこれを
「勇気をくじく」
と言います。
劣等感を克服し
問題を良い方向に解決するためには
周囲の人たちは、
勇気をくじく関わりをやめて
「自分はこの問題を解決できる」
と思えるような関わりをする必要があります。
あるいは自分自身に対する
「勇気づけ」として
「こうしていれば何とかなるだろう」
と言い聞かせてみることも
良いかもしれません。
これは
「根拠のない自信」
とよく言われているものですが、
アドラー心理学の視点から見てみると
「根拠のない自信」は
自分自身に対する勇気づけ
と捉えることができます。
参考文献
このコラムはアドラーの著書『生きるために大切なこと』の第二章「劣等コンプレックスとは何か」を私なりにまとめたものです。
この章は、たくさんの事例を紹介しながら「劣等コンプレックス」について説明している章なのですが、事例が多いためか、なかなか要点がつかみにくく感じたので、このコラムでは、事例は思い切って省いて、要点について、まとめてみました。
また「勇気づけ」については、具体的な記述がなかったため、別の文献を参考にして補足をしました。
(参考:定年後の人生を変えるアドラー心理学)
元の本はこちら。