自己啓発本〜専門書まで、
巷には臨床心理学の本が
たくさんあふれています。
そんな数ある臨床心理学の中から
臨床心理学を学びたい人が
最初に手を取るとしたら、どの本が良いか?
現役臨床心理士&公認心理師である私が
1冊の本を選んでみました。
*プラス「おまけ」で、
挫折しない学術書の読み方
も書いてみました。
おすすめ本はこれ
いきなり結論ですが、
私がおすすめする心理学の本はこちら。
『臨床心理学 (New Liberal Arts Selection)』有斐閣 (2015/4/13)
ガチな心理学の本です。
大学の講義で、
臨床心理学の教科書・テキスト
として使えるレベルの本です。
いわゆる「学術書」です。
「学術書」と聞くと、
一気に敷居が高くなった感じがするかもしれませんが、
「臨床心理学を学ぶ!」
という意味で選ぶのであれば、
これがベストチョイスかなと思います。
理由を書いていきますね。
この本の良いところ
信頼できる
「心理学」というのは
なんか「あやしい」雰囲気の漂うテーマです。
書店や、図書館にいってみて
「心理学」のコーナーを見てもらえれば
すぐに分かるかと思いますが、
「人の心を操る!」とか
「深層心理!」とか
「心理学を使ったナンパテク!」とか
やばそうな感じの本がいっぱいあります。
下手をすると、心理学のコーナー自体が
「占い・心理学」
などと、スピリチュアル系と一緒にまとめられていることも珍しくありません。
*
そんな中で、
心理学を「学びたい」のであれば、
科学的・学術的に信頼ができる本を
選んだ方が良いでしょう。
刺激的なタイトルに惑わされて
デタラメなことしか書いてない本を選んではいけません。
*
そういう意味で
『臨床心理学 (New Liberal Arts Selection)』
は、学問的にしっかりとした本です。
本の紹介にも、
エビデンスベースドの観点から,臨床心理学の基礎,理論と実際,様々な心理的障害の理解と支援について,体系的に整理。
とか書かれてあるとおり、
科学的な根拠に基づいた(=エビデンスベースドな)本です。
事前知識なしに読める
科学的・学問的な本であることは、
大事というか、
大前提なのですが、
「でも、そういう本って、お難しいんでしょう…?」
という声が聞こえてきそうです。
*
たしかに、いわゆる学術書・専門書を、手に取ったことがある方は分かるかもしれませんが、
・専門用語が多すぎて、意味不明!
・説明が説明になっていない!
・日本語でお願いします!
などということが、よくあります。
*
ですが、この本は
基礎知識から丁寧に書かれています。
いきなり読者を置いてけぼりする、
というようなことはないので、大丈夫です。
心理学について何もしらなくても、
1から学ぶことが出来ます。
まあまあ面白い
「でも、そういう本って、つまらないのでしょう…?」
「途中で挫折しちゃわないかしら…?」
という声が、また聞こえてきそうです。
*
この点については、
はっきりと言っておきましょう。
学術書は基本的に
「くっそ、つまらない本」です。
そもそも、
学術書は読者を楽しませようとしていません。
小説や自己啓発本などの
エンタメ本とは目的が違うので
面白おかしいわけがありません。
学術書の目的は
「楽しむこと」ではなく
「学ぶこと」です。
学術書が面白くなるとしたら
それは「学ぶこと」が面白くなった時だけです。
*
と、ちょっと厳しめなことを言いましたが
そうは言ってもこの本、まあまあ面白いです。
・説明がくど過ぎず
・かと言って足りな過ぎず
・具体例もほどほどにあり
…と
割とバランスよく説明されているので
「学ぶこと」の理解が進みやすく
まあまあ面白く読めるのではないか
と思います。
*
とは言っても、
やっぱり学術書は学術書です。
小説のようにグイグイと引き込まれて
最後まで時間を忘れて読んでしまった!
…などということは普通はありません。
読んでいるうちに、
だんだんと睡魔が襲ってきて眠くなるのが普通です。
私も何度か寝ました。
そういう、
くっそ退屈な、眠くなる学術書を
挫折せずに読むための方法についても、
おまけで書いておきたいと思います。
* * *
ちなみに、
「学術書を読んで学ぶ」
ということは、
いわゆる「独学」ということですから、
結構大変です。
「独学」には
向き不向きもあります。
「独学」で学ぶことが大変なら
心理学講座などに行ってみて
「講義」で学ぶのも、手かもしれません。
*
あるいは、
学問として学ぶだけでなく、
臨床心理士や公認心理師など
心の専門家として働きたい人は
心理学の大学や大学院に行き
専門家としてのトレーニングを受ける必要があります。
それはそれで1つの大きなテーマなので、
また別の記事でお伝えしたいと思います。
* * *
さて、広告を挟んだところで、
「それでも私は独学で学びたいんだ!」
という人向けに、
挫折しない学術書の読み方
を紹介いたしましょう。
学術書の挫折しない読み方
面白さを期待しない
繰り返しになりますが、
学術書は基本的に面白くありません。
小説や自己啓発本のように
面白さを期待して読むと、
確実に挫折します。
1ページ目で挫折します。
ですので、
面白さを期待するのはやめましょう。
むしろ
「これは苦行だ!」
と思って読みましょう。
その苦行を乗り越えた先に、
新しいことを理解する「面白さ」
があるはずです。
つまらないところは飛ばして読む
「苦行だ!」と
かっこいいことを言いましたが、
つまらない場所はガンガン飛ばしましょう。
学術書は、小説とは違いますので、
1ページ目から順番に1枚づつ読む必要はありません。
「退屈な話が始まったな」
「興味ないな」
と思ったら、
そのページは適当に飛ばしましょう。
で、飛ばした先で、
話についていけなくなったら、
また戻って読めば良いのです。
特に、学術書の中でも、
最も退屈で、ほとんど読む必要のない所は
冒頭の「まえがき」と「謝辞」です。
小説で言えば冒頭は「つかみ」の部分で
その本にぐっと引き込まれる
一番面白いところのはずですが、
学術書の場合は
「全体をなんとなく説明して、
お世話になった人にお礼を言う」
というかなり退屈な部分です。
ここを真面目に一語一句読んで
理解しようと思うと挫折します。
冒頭から挫折します。
適当にとばしましょう。
興味のあるところから読む
ていうか、
むしろ、目次をぱらっとみて
興味のあるところから読み始めても良いかもしれません。
わからない専門用語ができたら、
本の後ろの索引から調べて、
その場所を読めば良いのです。
学術書の面白さは
「学ぶこと」「知ること」ですから、
モチベーションを高めるためには
とにかく、
「自分が学びたいこと」
「知りたいこと」
が書いてある箇所から読むと良いでしょう。
全部読まなくてもよい
もっと言うと、
学術書は全ページ読む必要はありません。
今回の本『臨床心理学 (New Liberal Arts Selection)』は
私が専門家として自信をもって紹介できる本ですが
なんと、私も全ページ読んでいません。
学術書は全て読むものではありません。
自分の知りたい場所を読んで
さらに知りたいことが出てきたら
文末の参考文献(本・論文)を見て
その文献にジャンプする。
あるいは、
知りたいワードで検索して
新しい本を探す。
というのが、
学術書のイケてる読み方です。
学術書は中途半端に読むものです。
全部読まないのは「挫折」ではなく
ただ単に、
「興味がなくなった」か
「もう読む必要がないほど理解した」か
どちらかです。
まとめ
臨床心理学を学びたい人におすすめの本は
『臨床心理学 (New Liberal Arts Selection)』
です。
ガチな心理学の学術書ですが、
その中でも、
丁寧で、読みやすくまとめられていて、
臨床心理学の全体像をつかむことができます。
けれども、
本だけで「独学」で学ぶというのは結構たいへんなこと。
挫折しそうなら、
心理学講座などの
「講義」で学ぶのも
良いと思いますよ。