あるモノや状況に恐怖を感じることがあります。
例えば、飛行機に乗ることや、高層ビルなどの高い場所、ネズミやクモなどの特定の動物、注射をされること、血を見ること、人前でスピーチをすること、人の視線、などなど。
どのような事に恐怖を感じるかは人それぞれで、他の人にとっては「そんなことで?」と思う事でも、本人にとってはどうしようもなく恐ろしく感じてしまうこともあります。
恐怖は自然な感情
恐怖そのものは自然な感情です。
人間は怖い場面に遭遇すると「危険だ!」というシグナルとして恐怖を感じます。例えば、飛行機が急降下した時や、高い場所から落ちそうになった時は、誰でも恐怖を感じるはずです。
恐怖の感情があることで人間は危険を察知して自らの身を守ることができるのです。
恐怖が問題になる時
では恐怖はどのような時に問題になるのでしょうか。
恐怖が問題になるのは、その恐怖が自分にとって苦痛であったり、恐怖によって生活がままならなくなる時です。
例えば、クモが出てくるかもしれないと常で恐怖に怯えていたり、人の視線が怖いために学校や仕事を休みがちになってしまったりすると「自然な感情」というだけでは片づけられなくなってしまいます。
恐怖についてのカウンセリング
恐怖についてのカウンセリングは次のように進めることが多いです。
1.自分の恐怖の理解を深める
これまでの経験を振り返り、問題となっている恐怖がどのような性質のものなのかを、カウンセラーと一緒に理解をしていきます。
- いつ頃から恐怖を感じているのか
- 何がきっかけで恐怖が現れるのか
- 恐怖の強さは1~100でどのくらいか
- 恐怖が弱まる時もあるのか
- 恐怖にどう対応してきたか
- 恐怖によって邪魔されていることがあるか
…などなど、1人で考えるだけでは思いつかないようなことも、カウンセラーと一緒に詳しく調べていきます。
「自分の恐怖を観察して記録をつける」といったワークをする場合もあります。
ここで詳しく理解したことが、解決のヒントになる場合も少なくありません。
2.カウンセリングのゴールを設定する
自分の恐怖がよく理解できたら、カウンセリングを通してどうなっていきたいのか、カウンセリングのゴールについて話し合います。
ゴールの形も人それぞれです。
- 恐怖を弱めたいのか
- 弱めるとしたらどの程度まで弱まれば良しとするか
- 恐怖があったとしても、それにとらわれなくなれば良いのか
- 恐怖のために出来ずにいた行動が出来るようになれば良いのか
…などなど、いろいろな可能性を話し合います。
3.計画を立てて実行する
ゴールが明確になれば、そのゴールに向かうための計画をカウンセラーと話し合います。
心理学には「恐怖を弱める方法」「恐怖を受け入れる方法」「出来ない行動を出来るようにする方法など」いろいろな方法がありますが、どの方法をどんなふうにやっていくと良いかということは、人によって異なります。
例えるならば、ゴールにたどり着くまでの道順は人によってそれぞれで、障害物を避けながら進んだ方が良い人もいれば、障害物を片づけながら進んだ方が良い人もいます。
絶対にうまくいく方法が初めからあるということではなく、計画を立てて実行をして、その結果から計画を修正してまた実行をする…ということをカウンセラーと二人三脚で行っていきます。
これはお互いに根気のいる取り組みですが、そうやって協力してカウンセリングを進めていく事で、恐怖の問題が良い方向に向かっていきます。
医学的な治療について
心理学による恐怖のカウンセリングについてお伝えしてまいりましたが、恐怖を過度に感じてしまう状態のことを医学的には「恐怖症」と呼び、医学的な治療の対象にもなる場合があります。
医学的な治療では、恐怖を過度に感じてしまう脳の状態を薬物によって鎮める薬物療法を行う場合が多いようです。
また医学的な薬物療法と心理学的なカウンセリングの両方を組み合わせた方が、治療効果や再発予防効果が高いという研究結果もあります。
当ルームでは、受診されていない方でも、受診中の方でも、心理カウンセリングをお引き受けしております。受診中の方は、主治医の先生によくご相談の上、お申し込みください。