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『なんのために学校に行くの?』
この質問は、
不登校にまつわるカウンセリングをしていると、
本当によく出会います。
不登校をしている子どもに直接きかれることもありますし、
そのご両親の相談で
「こどもからそう言われたけれども、
どう答えたら正解なのでしょうか?」
と質問されることもあります。
この「学校に行く意味」というテーマに真正面から取り組んだ本がこちら。
その名も
という本です。
まさに「そのまんま」の本ですね。
ちなみに副題は『不登校ってなんだろう?』
なので、
不登校という現象から、
学校に行く意味を考えた本だということがわかります。
今日はこの本から
「学校のもつ9つの要素」
について紹介したいと思います。
9つの要素
一言に、学校と言っても、
学校にはさまざまな要素があります。
したがって、
一言に、不登校と言っても、
その学校の様々な要素が
不登校にも当然、絡み合っています。
この本の中で挙げられている、
学校のもつ要素は次の9つです。
- 知識・技能の習得の場
- 社会ルールや振る舞い方を身につける場
- 交遊やクラブ活動の場
- 対人関係の諸経験を積む場
- 進路の選択と準備の場
- 資格取得の場
- 通過儀礼的な場
- モラトリアムの場
- 失業者プールの場
一つずつ見てみましょう。
知識・技能の習得の場
学校は、知識や技能を習得する場です。
国語や算数(数学)などは知識、
家庭科や図工は技術
…などなど
学校でおこなっている教育活動は
この知識と技能の習得を
目指して行われています。
小4ギャップや、中1ギャップ
学習障害、知的障害…などなど
この習得に難しさが出ると、
劣等感を感じたり、
授業に出続けることが苦しくなったりして、
それを理由に不登校になる場合があります。
社会ルールや振る舞い方を身につける場
「学校は社会の縮図」
などと言われたりしますが、
学校は社会的な場の一つです。
一人で好きに活動をすることが許される範囲は少なく、
クラス単位での授業や、
集会や行事への参加、
合わせなければならないルール
などなど、社会的な振る舞いを教えられます。
こういった、
「みんなと同じことをしなさい」
というルールに
うまく合わせられなかったり、
あるいは、
合わせることに疲れてしまったりすることで
学校に行くことが辛くなることがあります。
交遊やクラブ活動の場
学校はひたすら軍隊のように
学習を続ける場ではありません。
授業と授業の間には「休み時間」があり、
放課後も部活やクラブ活動をやったり
それがなくても友達同士で遊んだりします。
こういった友達どうしの付き合いがうまくいかずに、
学校に行くことが
苦しくなる場合も少なくありません。
対人関係の諸経験を積む場
学校は人と関わる場でもあります。
クラスメイトもいますし、
学校の先生もいます。
その中で、家庭では経験したことのない
対人関係上の経験を、
子どもたちはしていきます。
例えばそれは、
先生に怒られる経験かもしれませんし、
クラスメイトに負ける経験かもしれません、
良い経験だけではなくて、
嫌な経験・悔しい経験も沢山することでしょう。
そういった経験を積む中で、
人は対人関係のとり方を学んで行きます。
この対人関係の経験を積む上で、
それがその子にとっては
とても苦しい経験で、
学校に行くことが
辛くなってしまう場合があります。
例えば、
「先生に怒られたから、先生が怖くて行けない」
「友達が意地悪をするから、
友達に会いたくないから行けない」
などです。
進路の選択と準備の場
学校は、
社会に出る選択と準備をする場でもあります。
進学はどうするのか、
地元の学校に上がるのか
私立を受験するのか、
大学や専門学校に行くのか、
就職するのか、
就職するなら、
どこに就職するのか…?
そして、そのような選択が、
現実的に可能なのか、
そのためにどんな準備が必要なのか
そういったことを考える場でもあります。
「進路相談」は、
まさにその進路の相談ですね。
この進路にまつわる問題で、
例えば、希望の進路に行けなかったり、
あるいは諦めざるをえない事情があったり、
そういった挫折を味わうことを通して、
学校に行くことが苦しくなる場合もあります。
資格取得の場
小学校・中学校の義務教育の間は、
このような認識は薄いかもしれませんが、
学校は資格取得の場でもあります。
美容師、調理師、教員、弁護士、医師、
などの専門職につくための場でもありますし、
そういった専門職でなくても、
高校を卒業すると「高校卒業資格」
大学を卒業すると「大学卒業資格」
となり、
就職では、
「大卒以上」や「高卒以上」
などの条件で、募集されることも少なくありません。
つまり、将来の就職に直結する要素と言えます。
これらは高校以上の要素なので、
「小学校・中学校の不登校には関係ない」
と思われるかもしれませんが、
果たして本当にそうでしょうか…?
「学校にいって何になるの?」という質問の裏には、
「高校卒業したからって、何なの?」
「大学卒業したからって、何なの?」
「就職できたからって、何なの?」
などの、
学校教育から就職にまでの
いわゆる「一般的なルート」に対する
不信感が見え隠れすることも少なくありません。
このまま学校を続けて
将来的に資格をとったからといって
幸せになれるとは限らない、
だったらそこまで無理をして
学校にいく必要はあるの…?
…といった具合です。
通過儀礼的な場
これはちょっと心理学的な話で
難しいかもしれませんが、
学校には、
成長のターニングポイントをチェックする
儀式としての性質があります。
例えば、
「卒業式」などはまさにこの儀式です。
今の学校を卒業し、
次のステージに進むための儀式です。
人間は、
ただ変化をしていくだけではなくて、
あるポイントで、
心の「節目」をつけることが、
とても大切な生き物のようです。
この儀式としての要素も、
不登校に関係することがあります。
例えば、ずっと登校できなかったけれども
「せめて卒業式は」
と思い登校を頑張って、
進学先の学校は4月から行けるようになる
などのケースもありますし、
一方では、
卒業式という仰々しい場所に参加することは嫌だと、
逆に不登校になってしまうケースもあります。
モラトリアムの場
これも心理学的なお話になりますが、
学校はモラトリアム(=猶予期間)の場
という要素もあります。
猶予期間とは、
何から猶予されているのかというと、
「社会に出て働くこと」から猶予されています。
ただしこの猶予といのは
「やらなくていいよ」
という意味ではなくて、
「やる準備をする期間だよ」
という意味での猶予です。
ですので、
社会に出ることを免除される代わりに、
勉強に励んで、
社会に出る準備をしなさいよ、
ということです。
不登校との関係でこの要素を考えると、
そもそも社会に出ること自体を
拒否している場合もあります。
『別に社会に出なくて良いから
その準備をする学校にもいかなくてもいい』
という考え方です。
あるいは、全くこの逆で、
『学校に行く準備を今一生懸命しているの!』
というケースも少なくありません。
ゆくゆくは社会に出るつもりはあって、
このままでは良くないと、
自分自身でも思っている
けれども、
まだ学校に行く準備ができていない
という考えです。
学校は社会に出る前の猶予期間ですが
不登校は、
学校に行くための猶予期間ということです。
失業者プールの場
最後のこれは、
社会的な話になりますが、
学校は失業者を集めておく場でもあります。
と、言うと
ぎょっとした感じを受けるかもしれませんが
これを理解するためには、
まず学校が存在しない社会を
想像してみるといいかもしれません。
もし学校がないと、
子どもが6歳くらいいなったら、
「さあ、働きなさい」
ということになります。
とは言っても子どもに出来る仕事など、
現代社会では限られていますので、
多くの子どもは「失業者」になります。
そうすると、
やることをなくした子どもたちは、
そこら辺にたむろして、
大人の目の届かないところで、
悪さをしたり、
逆に悪さをされたり、
ということが起こるようになります。
こんな感じで、
日本中が
子ども失業社会になってしまうことを
避けるために、
能力や意欲にかかわらずに
全ての子どもを「学生」として、
「学校」という場にプールしておくことで
社会的に管理をしやすくして、
かつ将来的には
しかるべき時期に労働者として
社会に送り出す基盤としているわけです。
つまり、
教育問題は、突き詰めると、労働問題なのです。
この問題も一見、
不登校には関係しなさそうに見えますが、
そんなことはありません。
こういった社会的な要素というものは、
個人の意思とは無関係に働くものですので、
「あなたが行きたくないとしても
社会の制度上そういうことになっているから
嫌でも行ってください」
という要素が、
学校にはどうしてもあるということです。
大人ならまだしも、
子どもにとってはこういった理屈は
納得し難いものですよね。
いろいろな要素から不登校を見る意味
以上、学校のもつ9つの要素について、
簡単に紹介しましたが、
いかがでしたでしょうか?
どの要素も一概に、
こうすれば良いということではなくて、
ケースバイケースでプラスに働くこともあれば
逆にマイナスに働くこともある要素です。
これだけで、
何か不登校を解決する
答えが出るということはないでしょう。
けれども、
ただ「学校へ行きなさい」
とするだけではなくて、
「学校とは何なのか」
という視点に戻って
そこからもう一度、
『なんのために学校に行くの?』
という子どもの疑問に
真摯に向き合っていく
そういう姿勢が必要なのではないかな、
と思うのです。
あとがきツイート
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