双極性障害とは
双極性障害(Bipolar disorder)とは
「とても楽しい気分の状態」と
「とても落ち込んだ気分の状態」を
行ったり来たりする
気分の波の激しさが問題になる病気です。
以前は
「躁うつ病」と呼ばれていましたが
「うつ病」とは全く別の病気で、
治療法も異なります。
症状
双極性障害は、
気分の激しい波のために
社会生活で困ることがあります。
気分が上がっている時は、
興味関心が高まり、
なんでも出来る気がして、
かなり行動的になります。
一見、活動的で良さそうですが、
後先を考えずに
買い物やギャンブルをやり過ぎたり
急に仕事を変えたり、
些細なことで喧嘩をしたり、
性的に奔放になったりと、
落ち着いたときに考えると
「やってしまった…」
と思うようなことばかりで、
本人も周囲も困ってしまいます。
一方、気分が下がっている時には、
何もやる気が起きなかったり
自己肯定感がかなり低下したり
死について考えたり
と「うつ病」によく似た状態
になります。
周囲にしてみれば
ついこの間まで
(気分が上がって)
大きなことを言っていたのに
(気分が下がって)
急に何もしなくなり
一貫性のない人だと
誤解されることもあります。
症状が、
本人の苦しさだけでなく
人間関係にも影響することが
双極性障害の特徴です。
人口と比率
双極性障害の有病率は1~3%。
世界では6000万人が罹患していると推定されています。
(日本では本格的な調査がまだされていないようです)
参考
・双極性障害(厚生労働省)
・双極性障害(Wikipedia)
心理学的メカニズム
双極性障害/躁うつ病の
心理的な原因・メカニズムは、
気分を一定の範囲に保つ機能の低下です。
正常な気分の変化
下の図は
一般的な気分の上がり下がり
を示した図です。
黄色い線が、気分の波。
上に行けば行くほど
ハイテンションになり、
下に行けば行くほど
ローテンションになります。
真ん中の黒い線は、
通常の気分の位置です。
上下の緑の線が、
気分を一定に保つこころの機能です。
健康な人でも、
気分の上がり下がりがありますね。
楽しいことがあれば
テンションが上がるし、
疲れたり、嫌なことがあれば
テンションは下がります。
けれども、健康な人は、
この緑のラインに気分が近づくと
逆の方向に気分を戻そうとする働きが
自動的に起きるようになっています。
気分がどんなに高まっても、
どこかで熱は冷めて
冷静になりますし、
逆に落ち込んだとしても、
しばらくすれば
気持ちも晴れていきます。
心の機能が健康に働いていると、
それを意識しなくても
勝手に、自動的に、
一定の範囲内に気分が収まります。
躁うつ病の気分の変化
一方で、
躁うつ病/双極性障害の方の気分の変化は、
次のようなものです。
気分を一定に保つ機能が
低下しているので、
気分が飛び抜けてしまいます。
そして飛び抜けた気分は
しばらくその状態に留まり続けます。
これを、
躁状態・うつ状態、
と呼びます。
慣性の法則
突然ですが、
「慣性の法則」
を覚えているでしょうか?
中学校の物理の時間にやるあれです。
物体は、
一方向に力が加わると、
それを止める力がない限り、
ずっとその方向に
動きづつけるという科学の法則です。
実は、
躁うつ病による気分の動きにも
これと同じことが言えます。
例えば、
テンションが上がって楽しくなると、
楽しいことをしたくなりますよね。
そして楽しいことをすると、
もっと楽しくなります。
こんな風に、
楽しい気持ちは、
楽しくなればなるほど、
さらに楽しくなって
どんどん膨れ上がっていきます。
逆に、落ち込んだ時も同じです。
テンションが下がると、
気持ちが落ち込みますよね。
そうして落ち込んでいると、
さらに落ち込みます。
このように落ち込んだ気持ちも、
その落ち込みが
また次の落ち込みの原因となって
どんどん落ち込んでいくのです。
このように
双極性障害の調子が悪いときに
気分がどちらかの方向に向かうと、
止まることを知らずに、
どんどんそちらの方向に
突き進んでしまうのです。
躁うつ病/双極性障害の治療
躁うつ病/双極性障害は
気分が正常の範囲内に収まりきらずに、
飛び出してしまう病気ですので、
その治療は、
気分が安定することを目的に行われます。
薬物療法
躁うつ病/双極性障害は
薬物療法による治療がメインです。
不安定になりがちな気分の波を
気分安定薬(mood stabilizer)などの
お薬を使って、安定化を図ります。
心理カウンセリング(精神療法)
薬物療法と併用して
心理カウンセリング(精神療法)
も有効であることが分かっています。
双極性障害でない人は、
意識しなくても自動的に
気分の波が正常の範囲内に収まるのですが、
双極性障害のを持つ人にとっては、
自動で心を安定化する機能が不十分なため、
手動で、つまり自分自身の工夫によって、
気分が安定するように調整
しなければなりません。
心理カウンセリングでは、
そのような工夫を
臨床心理士(カウンセラー)
との対話をとおして
自分自身にあった形で探していきます。
双極性障害の具体的なカウンセリング内容
具体的には、
①躁状態やうつ状態に入る時のきっかけ
を振り返り、
また同じことにならないようには
どうしたらいいか対策を考える。
②睡眠時間や服薬の乱れなど、
気分の波が大きくなりやすい要因が
おこるきっかけを探って
その対策を立てる。
③一般的に双極性障害が発症すると、
刺激が多い生活をしていると躁状態に
刺激の少ない生活をしているとうつ状態に
なりやすい傾向があるので、
刺激の量と気分の波の記録をつけて、
刺激の量を自己調整する。
④気分の波が大きすぎることで
対人関係上のトラブルが生じて、
そのストレスによって
さらに気分の波が大きくなる…
という躁鬱と対人関係の悪循環が生じ
それが双極性障害の治療を妨げるので
対人関係上の工夫をおこなう。
…などなど、
その人にあった
工夫できるポイントを探して
治療をよい方向に進みやすくする
ということを、
カウンセラーと一緒にやっていきます。
困ったときには専門家に相談を
もし、あなたや、あなたの親しい人が、
自分ではどうしようもないほどの
激しい気分の波に困っているなら
精神科を受診するとよいかもしれません。
精神科ときくと
抵抗があるかもしれませんが
必ず力になってくれます。
当サイトでは
医学的な診断や治療はできませんが、
双極性障害との上手な付き合い方や
気分の波について
相談をすることができます。
すでに治療中の方は、
必ず主治医とよく相談をした上で
お申し込みください。
あるいは、
そこまで極端ではなくとも
気分の波で困ることがあれば、
ご遠慮無くご相談くださいね。